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東京地方裁判所 昭和45年(行ウ)120号 判決 1971年10月18日

原告 株式会社 日綜

右代表者代表取締役 赤松繁行

右訴訟代理人弁護士 長尾仁司

同 中西正義

被告 渋谷税務署長 中島健蔵

右指定代理人 川越一郎

<ほか四名>

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

一  申立て

(原告)

「原告の昭和四〇年三月一日から昭和四一年二月二八日までの事業年度分法人税につき被告が昭和四三年五月一四日付をもってした重加算税賦課決定を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求める。

(被告)

第一次的に主文同旨の判決を求め、第二次的に「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求める。

二  原告の請求原因

(一)  原告は、その昭和四〇年三月一日から昭和四一年二月二八日までの事業年度分法人税について、昭和四一年一二月二七日に確定申告をしたところ、被告は、昭和四三年五月一四日付をもって右法人税額等の更正ならびに金一六、八二一、〇〇〇円の重加算税賦課決定(以下両者を合わせて本件処分という。)をした。

(二)  しかるに、本件処分の通知書は、当時原告に送達されず、なんら受送達権限のない石川武夫に交付され、同人の手許で放置されていたため、原告代表者は、昭和四四年九月二八日に右石川から右通知書を受領してはじめて本件処分のあったことを知った。

(三)  そこで、原告は、昭和四四年一〇月八日本件処分について被告に異議の申立てをしたが、同月二七日却下され、さらに東京国税局長に対する審査請求も昭和四五年四月二日に却下された。

(四)  しかし、本件処分のうち、重加算税賦課決定は税額の算定を誤った違法なものであるから、その取消しを求める。

三  被告の主張

(一)  本案前の主張

被告は、昭和四三年五月一四日に本件処分をし、同日その通知書を原告の本店においてその使用人である西川栄美子に交付して送達した。したがって、その後一年四か月以上もすぎた昭和四四年一〇月八日になされた本件異議申立ては不適法であり、本訴は適法な不服申立てを経ないものとして却下されるべきである。

(二)  請求原因に対する答弁

請求原因(一)(三)は認めるが、(二)(四)は争う。

四  証拠≪省略≫

理由

被告が昭和四三年五月一四日に本件処分をし、これに対し原告が昭和四四年一〇月八日異議の申立てをしたことは、当事者間に争いがない。

そこで、右異議申立ての適否について検討するのに、≪証拠省略≫を綜合すると、更正や加算税賦課決定等の通知書は郵便によって送達するのが通例であるが、本件処分については国税通則法三八条の規定により繰上請求をする必要からとくに交付送達をすることとなり、本件処分当日である昭和四三年五月一四日渋谷税務署職員梅津正雄が右処分の通知書を東京都渋谷区代々木一丁目三六番六号の代々木駅前ビル八階にある原告の事務所に持参したところ、原告代表者が不在で、その秘書をしている原告の使用人西川栄美子(昭和二〇年生)しかいなかったので、書類の受領について相当のわきまえのある同人に対して事情を説明したうえ、前記通知書を交付したことが認められる。≪証拠判断省略≫

してみると、本件処分の通知書が原告の使用人である前記西川に交付されたことによって、原告に対する送達が適法に行なわれたものというべきことは、国税通則法一二条五項一号の規定に徴して明らかであり、かりに原告代表者がその後において現実にこれを了知することがなかったとしても、そのために右送達の効力が左右されるものではない。

のみならず、≪証拠省略≫によると、本件処分にかかる法人税四、一〇五、四〇〇円、重加算税一六、八二一、〇〇〇円については、前年度分の法人税三、八〇八、九〇〇円、重加算税二三、九五三、二〇〇円とともに、本件処分の翌日である昭和四三年五月一五日に東京国税局が原告の財産に対して参加差押の手続を行ない、その旨原告に通知し、さらに翌一六日にも同国税局が原告の有する多数の有価証券を差押え、そのさい原告の経理担当者である細見稔が立会って差押調書謄本を受領していることが認められるのであり、かような経過からすれば、小規模・小人数の会社である原告(この点は≪証拠省略≫から推認される。)において、その代表者が本件処分の送達およびこれに基づく差押後一年数か月もの間右処分のなされたことを知らなかったとか、あるいは、その間に本件処分に対して異議申立てをしなかったことについてやむをえない理由があったものとはとうてい認めることができない。

そうすると、原告の前記異議申立ては申立期間を徒過した不適法なものというほかなく、本訴は適法な不服申立てを経ていないものとして却下を免れない。

よって、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高津環 裁判官 内藤正久 佐藤繁)

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